アマモを対象とした研究プロジェクトにおいて、当社ではアマモ造成活動を芦北高校と共に芦北町の計石地区で実施しておりますが、
同じ八代海にある天草市の御所浦(離島)地区においても、アマモを増やそうとしている動きがあります。
前回 5月活動内容のブログでご紹介しました「天草海部」の正角部長さんから、
そのことをお聞きして、私(園山)自身初めて御所浦に出向いたのが、2019年11月でした。
その後も、2020年6月に2回・11月に1回、2021年3月に1回、そして先週2021年6月に1回と、これまで計6回の訪問で、
御所浦島でのアマモに関する活動について見て参りました。
その活動も御所浦地区全体を巻き込みながら発展しており、活動記録として、当ブログにおいてもつづっていきたいと思います。
これまで6回訪問のうち、今回は(直近3回訪問分に相当する)アマモ2021年シーズンとして示します。
↑ 御所浦の場所ですが、芦北町のほぼ西、天草・上島の南側に位置しており、
芦北町でのアマモ場造成活動エリアから20kmも離れていない、同じ八代海にあります。
水俣市に当社があることから、水俣港と御所浦港を結ぶ 海上タクシー (要予約・3往復)を利用して出向くことが多いです。
以前は、本島側(八代・芦北・水俣)から多くの航路があったようですが、現在は水俣の海上タクシー以外は定期航路なく、
陸路だと三角半島と天草五橋・天草上島を通って棚底港(倉岳)などから渡ることとなり大回りです。
また、旅好きの私としては 御所浦スポット も示したいところですが、割愛させてくださいませ。
<2020年11月の訪問:アマモ種子を仕込もう(アマモポットづくり)>
御所浦でのアマモ場造成活動は、
・天草漁協 御所浦支所
・漁協青年部
・天草市水産研究センター
らが協力して2014年から実施されており、
その中で、御所浦小学校5年生がアマモの種をしこみ(11月)、6年生となってから苗に育ったものを海に移植する(6月)
教育活動としても行われています。
↑ 島、唯一の小学校、天草市立御所浦小学校へ。天草海部の正角さんからのお誘いで今回も訪問。
活動を主導されている、天草漁協 御所浦支所の杉原さんと木村校長先生の打ち合わせに同席、
その後、5年生の教室で、杉原さんによるアマモの重要性と、アマモ苗をつくるための当日のアマモポットの作り方を講義。
↑ その後、小学校に隣接する「天草市水産研究センター(以下、水研)」の駐車場で、アマモポットづくりへ。
生徒の皆さん、初めてみる「アマモの種(右上画像)」に興味津々です。
アマモ種子自体は、漁協・水研の方が春に採取したアマモ花枝からより分けて保管していたものを利用します。
↑ その後、生徒さん一人2瓶ずつの作成へ。紅茶のティーバッグのような袋に海砂をいれてアマモの種を仕込み、
それを瓶にセットして海水をいれます。
週1度の海水交換を要しますが、一つは教室へ、一つは水研の皆さんが管理で、
アマモ種子から芽がでて苗状態となる6月まで見守っていきます。
(右下画像)はじめとおわりは、きっちり挨拶。「何を教えてもらう」「こんなことを知った」ことも伝えての挨拶が気持ちいいです。
↑ そして、実際のアマモ場を見に行こう!ということで、漁協などの船で移動。
11月ですので、多年生アマモが見えるかな?の時期で、また潮位も高めでしたが、
箱眼鏡も活躍して、それらしきものは確認できたので良かったです(右下の画像は校長先生のブログから頂きました)。
次の活動は7か月後の6月。生徒の皆さんは6年生になっていますが、また来ます!にて終了です。
当日の様子は、木村校長先生の ブログ でも記録されています(日々丁寧に全学年の記録をつづられております)。
<2021年6月の訪問:アマモ苗を仕込もう(アマモの植え付け)>
11月の訪問から半年以上が経過し、干潮時間と小学校側の授業時間を調整された日時に、
アマモ場造成活動を実施します!の連絡が、漁協 → 天草海部経由であり訪問。
御所浦小学校の6年生が、5年生のときにつくったアマモポットで育った「アマモ苗」の移植と、ロープ式下種更新法の実施です。
「ロープ式下種更新法」は、熊本県立芦北高等学校(以下、芦北高校)が開発したアマモ場造成手法で、
2014年熊本県が発行の「漁業者のためのアマモ場造成マニュアル」
< https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/life/80846_99157_misc.pdf 約14Mのpdfファイル。
上記ファイル展開後23ページ。補足として、アマモ花枝をロープに括り付ける方法として、現在は環境配慮もあり分解しやすい紐を用いております>
に掲載されていることから、漁協の杉原さんらが御所浦でも3年前から取り入れています。
手法開発の芦北高校と当社が活動していることもあり、「ロープ式下種更新法」を御所浦で実践しているよ!という天草海部の正角さん情報により、
訪問し始めたのが御所浦通いのきっかけでもあります。
現在は2020年シーズンより、アマモ種子がアマモ場造成したいエリアにまかれる目的を達成できるよう、情報共有させていただいております。
その手法は、干潟にロープを張り、そのロープに一定間隔でアマモ花枝の束をくくりつける手法で、
熊本県立芦北高等学校(林業科 アマモ班)が開発した
「森林の再生手法である『天然下種更新法』を参考とした自然に近い条件下による手法」(2009年より芦北高校でのアマモ場造成活動で実践)です。
その効果として、同校がアマモ場造成に向けて活動しはじめた2003年には、2500㎡だったアマモ場が、
2008年まででは1.5倍ほどの拡大をしていましたが、この手法を2009年から取り入れてからは、
2018年には20倍の5万㎡と、20倍もの面積のアマモ場を再生しました。
(その後、昨年2020年の大雨で残念ながら大部分は 消失 してしまいました)
ご参考:芦北高校の「ロープ式下種更新法」アマモ場造成活動の記録
↑ 2021年6月10日、いつもの9時前に御所浦到着。
天草海部の正角さん(右下画像の左)と浪崎さん(右下画像の右・画像が切れれてすみません・・・)と合流し、
御所浦小学校での校長・教頭先生との打ち合わせ、天草漁協御所浦支所での打ち合わせ、海中条件測定機器 のセットアップと、
あっという間に午前中が過ぎ去り、漁協の方々も交えてのランチタイム、午後から御所浦小学校6年生との活動です。
↑ (左上)まずは挨拶から。テレビ局(3社)・新聞社(1社)のカメラ・記者さんもいっぱいです。
(左下)その後、漁協の杉原さんから、ロープ式下種更新法の準備としてアマモ花枝の選定とロープへの固定方法をレクチャー。
(右上)昨年11月にしこんだアマモポットも、アマモ苗が出来上がり、移植待ちです。
(右下)御所浦近辺から予め採取・選別されたアマモ花枝です。これを一定間隔でロープに括り付けます。
↑ 今年はロープ3本。昨年よりも長いものも作りました。そして船に積み込みます。
↑ 4隻の船にわかれ、アマモを増やしたいエリアに移動(計3ヵ所・生徒さんは授業時間の関係で2ヵ所で実施)。
毎回、船が並走し、生徒さん同士が手を振りあうさまが微笑ましいです。
天草海部の正角さん、最後の最後まで海中条件測定機器センサーの調整確認をしています。
↑ 対象場所へ到着し、小船に乗り換えて上陸。
漁協の杉原さんにより、アマモポットの移植方法がレクチャーされ、生徒みんなで植えていきます。
6月といえども海水はまだまだ「冷た~い!」とはしゃいでいましたが、ホンネは泳ぎたいようです。
↑ その後、アマモ花枝を一定間隔で括り付けたロープを海に放ちます。
ロープの固定、アマモ花枝のボリュームなど、芦北高校方式とはすべて同一ではありませんが、
有効性(湾内)や作業性(授業時間と、大人チームの準備時間)考慮でブラッシュアップしていきます。
↑ ところで、御所浦のアマモですが、例年より少なめらしいですが旺盛です
(海水温が例年よりも下がらなかったことが何か影響しているかもしれません)。
また、右下画像のように、今年はモワモワしているものが発生し、それがアマモ場に長らくかぶさっていたという漁協さん情報もありました。
このモワモワは、芦北でも4月に見られましたので(右下)同じ状態だなと感じていますが、アマモ生育への影響はまだ未調査です。
↑ また、今年は3月にも訪問していますが、
2020年の6月に仕掛けたロープ式下種更新法での効果?というロープっぽいものとアマモが見られましたが、
よく見ると、木の枝でした・・・
3月のアマモの様子ということで、画像を記録しておきます。
ロープ式下種更新法の効果も、翌年あらわれるのかわかりませんが、評価手法も考えたいところです。
(アマモ場面積やボリュームの定量化、環境・水揚げ高との関連性)
↑ アマモ場造成したいスポット2ヵ所で、アマモ苗移植とロープ式下種更新法を仕掛けて、学校にもどる生徒さんとはお別れ、
その後は、もう1ヵ所のスポットで天草海部さんにより調査です。
このスポットも含めて、
・海中条件測定機器のセッティング
・底質採取
・水質調査
を実施。3月訪問時もデータ収集していることから、この6月と、今シーズンのアマモが終わるころの9月と推移を追っていきます。
天草海部さんによる3月調査の動画「アマモ場調査@御所浦(2021年3月)」(4分50秒)
2021年6月の御所浦訪問で6回目ですが、今回初めてブログ上で記録することになりました(個人FBでは示していましたが)。
御所浦では地元漁協さんらと、地元での教育活動として小学生が地元に携わっている機会となっていることが素晴らしいです。
また、ロープ式下種更新法の有用性を見出せる場所が増えることも嬉しく感じます。
次回の訪問は、推移を追っているデータ収集・サンプル回収で9月予定です。
今回も訪問機会をありがとうございました!
木村校長先生の 6月当日のブログ
≪ご参考:芦北高校との活動記録リンク集≫
【2018年12月】 : 共同研究体制スタート。アマモ班と初顔合わせ。
【2019年 2 月】 : 芦北高校に当社研究水槽設置。アマモ班との座談会。
【2019年 3 月】 : 深夜の定植活動
【2019年 4 月】 : 明るいときの定植活動(この月より最干潮時間が陽が高い時のため)
【2019年 5 月】 : 花枝採取、マリンチャレンジプログラム授与式
【2019年 6 月】 : ロープ式下種更新法でのアマモ場造成
【2019年 7 月】 : 土壌採取、分析
【2019年 8 月】 : 土壌採取、分析、取材
【2019年 8 月】 : 芦北高校「優秀賞」
【2019年 9 月】 : アマモ観察、採取
【2019年10月】 : アマモサミット・芦北高校もプレゼン
【2019年11月】 : アマモ観察、採取(この月より最干潮時間にあわせて深夜活動)
【2019年12月】 : アマモ移植(試験区設定)、観察、採取、取材
【2020年 1 月】 : アマモ移植(試験区設定)、観察、採取、当社ラボ見学来訪
【2020年 2 月】 : アマモ移植(試験区設定)
【2020年3・4月】 : アマモ移植(試験区設定)、観察
【2020年 5 月】 : アマモ試験区観察、採取
【2020年 6 月】 : ロープ式下種更新法でのアマモ場造成・試験区観察・ドローン飛行による撮影・芦北町環境基本計画掲載
【2020年 9 月】 : 豪雨後の記録1<堤防から見た画像>
【2020年 9 月】 : 豪雨後の記録2<上空・水中から見た画像>
【2020年10月】 : アマモ種子選別
【2020年11月】 : アマモ観察、移植(試験区設定)、種子洗浄、海辺の自然再生・高校生サミット2020
【2020年12月】 : アマモ観察、移植(試験区設定)、「高校生マイプロジェクトAWARD in 熊本・益城」
【2021年 1 月】 : アマモ観察、移植(試験区設定)、空撮画像取得開始
【2021年 2 月】 : アマモ観察、移植(試験区設定)、アマモ種子試験、空撮画像取得、光量子測定
【2021年 3 月】 : アマモ観察、移植(試験区設定)、アマモ種子試験、空撮画像取得、高校生マイプロジェクトAWARD 全国summit
【2021年 4 月】 : アマモ観察、移植(水槽生育分)、アマモ種子試験、空撮画像取得、マリンチャレンジプログラム授与式
【2021年 5 月】 : アマモ観察、移植(水槽生育分)、ロープ式下種更新法、アマモ種子試験、空撮画像取得
【2021年 6 月】 : アマモ観察、移植(水槽生育分)、ロープ式下種更新法、空撮画像取得、日本沿岸域学会参加
【2021年 7 月】 : アマモ観察、空撮画像取得、くまもと環境賞受賞
【2021年 8 月】 : アマモ観察、空撮画像取得、マリンチャレンジプログラム全国大会出場へ
【2021年 9 月】 : アマモ観察、空撮画像取得、アマモ種子選別、アマモポット苗作成
【2021年10・11月】 : アマモ観察、移植(試験区設定、水槽生育分)、空撮画像取得、アマモ種子選別、光量子測定、SPAD値測定
【2021年12月】 : アマモ観察、移植(試験区設定、水槽生育分)、空撮画像取得、SPAD値測定
【2022年 1 月】 : アマモサミット・芦北高校もプレゼン
【2022年1・2・3月】 : アマモ観察、移植(試験区設定、水槽生育分)、空撮画像取得、SPAD値測定、水槽環境構築、マリンチャレンジプログラム全国大会、サイエンスキャッスル九州大会
【2022年 4 月】 : アマモ観察、空撮画像取得、水槽構築、光量子測定
【2022年 5 月】 : アマモ観察、空撮画像取得
【2022年 6 月】 : ロープ式下種更新法、空撮画像取得
【2023年 1 月】 : アマモ観察、移植(試験区設定)+4月追記(アマモ場昨年比較)
【2023年 5 月】 : アマモ観察、ロープ式下種更新法、取材